木村 恵子 先生(木村バレエスタジオ)のインタビュー

木村バレエスタジオ 木村 恵子 先生

木村バレエスタジオ 木村 恵子 先生 KEIKO KIMURA

東京都江東区出身。元チャイコフスキー記念東京バレエ団ソリスト。ソリストとして多くの作品で重要な役を演じ、「ドン・キホーテ」のキトリの友人、「白の組曲」の“セレナード”や“フルート”、「春の祭典」の4人の若い娘など可憐な容姿の中にしとやかな情緒を漂わせ、作品によってさまざまな表情をみせると評された。2005年木村バレエスタジオ開校。

ご縁に恵まれ、導かれたバレエ人生

バレエを始めたのは5歳の時です。こんなことお話ししていいのか分かりませんが、体を動かすことがあまり好きではなく、決して真面目な生徒ではなかったと思います。
最初の転機は小学校4年生のときでした。教室の発表会で「眠れる森の美女」という作品のフロリナ王女に立候補したんです。実力に見合わない役でしたからみんなに無理だと笑われましたし、私が先生でもやらせなかったと思います。ところがそのときの教室の大先生だけが、やってみなさいと言ってくださって。発表会当日も踊りきれたとは言えませんが、頑張ればチャンスは巡ってくるし、そのためにももっと練習をしなければと感じました。
それからも普通に学校へ行きながら習い事としてバレエを続けていました。プロの道なんて自分には関係ないと思っていましたが、どういうわけか高校1年の時に東京シティ・バレエ団の理事の先生に目をかけていただいたんです。その後は18歳でチャイコフスキー記念東京バレエ団のオーディションに運よく合格。そこで溝下司朗先生という芸術監督に出会い、13年間プロとして舞台に立ち続けることができました。
私自身、特別な才能があったわけでもなく、コンクールの出場も海外留学の経験もありません。ですが人とのご縁には本当に恵まれて、そこで得たご恩に報いようと頑張ってきた人生だったと思います。

プロを目指す子も、趣味で楽しむ子も一緒に

同じ東京バレエ団に所属していた夫と結婚をし、子育てとバレエを両立させるために引退して教室を開きました。夫を最初に知ったのは、高校生の頃に見たバレエ雑誌なんです。18歳で主役に抜擢されたという記事を読んで「なんて素敵なんだろう」と思っていたら、入団したところにいて(笑)。
木村バレエスタジオは、プロを目指している子も趣味として楽しみたい方もどちらも仲良く一緒にできるお教室を目指しています。実際にプロとしてバレエカンパニーに行った子もいるんですよ。残念ながら私たちの出身である東京バレエ団に進んだ子はまだいないんですけどね。
子どものクラスは大きく4つに分かれていて、バレエが初めての子はBクラスから始めてもらいます。幼稚園の時からずっと続けている子が多くて、中学生から大学生までのDクラスは現在27人ほど。人数が多いのでほぼ毎日クラスを開いて、来たい時に来てね、という感じでやっています。通常のレッスンが終わった20時からは、コンクールに出場する子を一人ずつ見る時間にしています。
コンクールには夏休みや春休みを使って出場することが多いですが、うちはどちらかというと発表会の方に力を入れています。発表会は教室のお祭りですから、みんなで楽しく華やかに。大きなセットでストーリーのある幕もの作品を演じます。大人はご自身の状況に応じてですが、子どもたちは基本的には全員参加。半年くらいかけて練習をします。今年も町田市民ホールを借りて開催する予定。家族もお友達も招待しますから、みんなそれに向けて頑張っています。年齢が上がるほど良い役を演じられるので、受験を乗り越えながら続けている子が多いですね。

まずはバレエを好きになってもらうところから

私が現役で踊っていた時代はどこか「根性バレエ」のような風潮がありました。例えば足を上げるために無理やり押したり、できるまで何時間もやり続けたり。最近は違って、知識もないとダメですね。
海外の国立バレエ学校では座学も大切にしていて、骨や関節の正しい使い方なども教えています。関節はこういう仕組みになっているから、こうやれば足が上がる、といった具合に。日本ではまだそのように理論的に学べる学校が少ないので、私が自分で解剖学などの本を読んで勉強して生徒さんに教えるようにしています。とはいえ、得た知識を言語化して伝えるという点に苦労しており、その辺りも日々勉強中です。
当たり前ですが、自分とは考え方も違う人間に教えるので、講師の難しさは今だに感じます。ダンサーとして自分をどう美しく見せるかということと、美しく踊る方法を身に付けさせるのとでは全く違うので、今も勉強中です。
特に小さいお子さんに関しては、本人よりも親御さんがやらせたくて始めたケースがほとんどなんです。だからバレエが好きでやっているかと言えば、必ずしもそうではないんですね。クラシックバレエというのは古典の一つなので、歌舞伎と同じように型があります。好きなように踊れるわけではないし、決まりごとも多いので、それがイヤで辞める子も結構います。私も最初は不真面目な生徒だったので、気持ちは分かるよーと思っていますけどね(笑)
だから小さな子どもたちに関しては、どうやったらバレエを好きになってもらえるかを考えて指導しています。好きになればやる気も出ますから。

気軽に始められる大人のオープンクラス

教室を始めた頃よりも長津田も成熟した街になってきたようで、子どもが成長し、大人になってきたように感じます。子どもを教えるのは楽しいので、このまま続けていきたい気持ちもありますが、これからは大人の生徒さんもどんどん増やしていきたいなと思っています。
大人に関しては成瀬の方でオープンクラスも開いています。こちらは発表会の練習はせずに単発でレッスンが受けられます。初心者の方も経験者の方も気軽に始められますし、スポーツクラブよりもゆっくり丁寧にご指導させていただきます。
やはりバレエって少し敷居が高いようなので、まずはオープンクラスで始めてみて、続けられそうと思ったら通常のレッスンクラスに移っていただいてもいいかもしれません。実際にそのような方もいらっしゃいますので。

バレエが好き、という気持ちを持続させること

私が最初にバレエに興味を持ったのは3歳のときでした。母によれば、どこかに貼ってあったポスターを見て「この衣装が着たい」と言ったらしいんですね。バレエが踊るものだとも知らずに、ただあの綺麗な格好がしたかったようで。
5歳で実際に習い始めてみて、まるでおとぎ話の世界に入り込んだような気持ちになったのを覚えています。昭和の生まれなので、西洋文化への憧れとお姫様願望が強い子どもだったのでしょう。バレエの世界観にすごく惹かれて、夢中になりました。こんなに美しい世界はないと今でも思いますし、とにかくバレエが好きだったんです。
子どもたちを教えていて時々感じるのが、「こうじゃないと成功できない」「これをしないとプロになれない」というような先入観に縛られているなということ。ネットなどでうまくいっている子の話を読んで、「自分はそうじゃないから無理。辞める」という子もいます。好きなら続けてほしいし、好きじゃないとうまくならない。バレエに向いている人がどんな人かと聞かれれば、まずは「バレエが好き」という気持ちを持続させることができる人。それは子どもでも大人でも同じですね。

 

※上記記事は2023年2月に取材したものです。
時間の経過による変化があることをご了承ください。

木村バレエスタジオ 木村 恵子 先生

木村バレエスタジオ木村 恵子 先生 KEIKO KIMURA

木村バレエスタジオ 木村 恵子 先生 KEIKO KIMURA

  • 出身地: 東京都江東区
  • 趣味: 舞台鑑賞
  • よく読む本: シェイクスピアの戯曲(ロミオとジュリエットなど)
  • 好きな映画: ダンス系(ウエストサイドストーリーなど)
  • 好きな音楽: ショパン、ドビュッシー
  • 好きな場所: パリ

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