松岡 美子 代表理事(多世代交流カフェ レモンの庭)のインタビュー

多世代交流カフェ レモンの庭 松岡 美子 代表理事

多世代交流カフェ レモンの庭 松岡 美子 代表理事 YOSHIKO MATSUOKA

音楽大学を卒業後、ピアノ講師。結婚後は武蔵野市で自らの子育てをきっかけに、子育て支援の活動を始める。横浜市に引っ越し後、子育て支援の活動・さまざまな地域団体の活動を通し、横浜市の委員会や協議会へ参加。現在は、多世代の地域交流カフェ「レモンの庭」(横浜市緑区)を運営する一般社団法人フラットガーデンの代表。(JR横浜線・横浜市営地下鉄「中山駅」南口より徒歩7分)

武蔵野市の子育て支援・父の背中が原点「ないなら自分で創ろう」

武蔵野市では子育て支援が充実していて、子どもを見てもらいながら母親が勉強できる「母と子の教室」がありました。息子は育てるのが少し大変だったので、その場に随分助けられたなと思います。その後、横浜市に引っ越してきて感じたのは、公的な子育て支援があまりなく、でもその分行政を頼らないで“民の力”が強いこと。私も「ないなら自分で創ろう」と子育て仲間と何が必要か考え、行政に提言していきました。その後、横浜市の委員会や協議会に委員として参加する機会が増え、子育て中の親の生の声を届ける活動をしてきました。それから子育て支援拠点の法人理事長を14年間務めてきたのですが、やっているうちに乳幼児の支援も大切だが、多世代がごちゃ混ぜにいれる場の必要性を感じ、自分が実現したい場所がなければやはり「自分で創ろう」と思ったんです(笑)組織に入ってやっていた方が楽だとは思います。でも私は組織が安定すると、それを維持させようとして安定して守りに入り、常に対等でぶつかり合う緊張感がなくなることに違和感を感じてしまうんです。そう感じるのはもしかしたら父の背中を見て育ったからかもしれません。父はピアノの製造と調律をしてきた職人で、権力に屈せず、自分の仕事に対する美学のある人でした。どんな偉い人にも決して媚びることがなかった。父は、国際奉仕の精神で社会に還元するというロータリークラブに入っていて、私は小学生の頃からピアノの伴奏で式典のたびに父と一緒に行くことが多く、その当時は喜んで行っていた訳ではないけれど(笑)そこで、様々な社会貢献をしている大人を見ていたことが今の活動の原点に繋がるのかもしれないですね。

年代も個性もごちゃ混ぜだからこそ学び支え合える

私が子育て支援に長く関わる中で感じていたことは、乳幼児なら乳幼児だけ、高齢者なら高齢者だけ、とサービスが細分化されていて、もっとごちゃ混ぜであってもいいのになぁということです。同じような環境・年代で集うより、年齢の違う人がいることで、どうこうしなくても、自然といいように作用することがあります。昔あった村の集会所みたいなところは、それこそごちゃ混ぜだったんじゃないかなと思います。こっちで料理している人もいれば、あっちでは作業をしている人がいる、そして子どもを見てくれる人がいる・・・というような。高齢者がいることで若い人にとって良いことも色々あるんですね。ちょっと耳が遠いことで、精神的に大変な状況にいる方が、繰り返し同じ話をしても、ふわ〜っと聴いてくれたりね(笑)そうしてなんとなく一緒にいることで、その人のモチベーションとか生活の質が自然と上がるということがあると思うんですね。そもそも同じであることの安心感はどこから生まれているのだろうと思うんです。みんなと同じでなくてもいいし、また私の言うことも、なんでも素直に聴かないでいいと思うんだけど、若い子が素直すぎて心配になることもあります(笑)これまで正解とされてきたことも、簡単にひっくり返っちゃうことはたくさんありますから。だからここでは何か正解を求める訳でもないし、こうしなさいと決めつけることもしません。その人なりのペースでやっていけばいいのですから。

人はきっかけがあれば、いつでも始められて、できるようになるから面白い

例えば毎週開催している編み物や縫い物カフェでは、してもしなくてもどちらだっていいんですよ。でも見ていて自然としたくなったら、その時に始めたらそれでいいと思うんです。ここではやりたいことを教えてくれるスタッフがいるので、90歳の方が帯でバッグを作ったり、不器用で針に糸を通すことすらできなかった方が裁縫を楽しんでいたり、今の子どもよりも創作意欲も根性もバリバリあってかっこいいですよ。私自身、学校の家庭科とかあまり好きじゃなかったのだけど(笑)その時に教えられた方法が合わなかったとか、印象で、苦手に感じていただけということもあるし、幾つになったって伸び代があるってつくづく感じます。

自分ひとりでできることは限られているから交わり活かし合う

ここでは介護予防プログラムとして健康マージャンをやっているのですが、マージャンをやったことのない方たちに「マージャンはじめの一歩」という企画を始めました。実は健康マージャンに来られた方の中に「多分、この人が教えるのに適任なんじゃないかな」と思い、声をかけた方が資格まで取ってくれ、教えてくれるようになり、やってみようという女性がたくさん集まってきています。私は音大時代に合唱の指揮と部長をやって、いろんな環境や考えの人をまとめ、一つの楽曲を作るという経験も今に活きているかもしれないですね。「この人は適任そうだな、ここが活きそうだな」と考えるのが好きなんですね。なんでも同調はできないし、しなくていいけれど“聴く耳”を持って交わることは大事ですよね。みんなそれぞれの経験と背景があってそれが面白いと思うんです。それってごちゃませがいいと思う原点かもしれません。

マイナスがマイナスじゃない。それぞれの経験や“好き”が自然に活きる場所を

高齢者の自然な物忘れだって、マイナスをマイナスとしない。人間、なんでも覚えているよりも、多少忘れた方がいいこともあるでしょう(笑)それをなんでも改善しようと追求しようとするのはどうかと思うんです。やりたくもないことを無理やりやらされたり、子ども扱いのように話しかけられたりね。そういう施設に、自分だったら行きたくないと思ってしまいます。高齢者は特別なことではなくて、私もこれから辿っていくプロセスだと思います。その時に、こんな居場所があればいいなと思えるところを、作っていきたいと思います。人気のある麻雀もただやるだけじゃなくて、その後もお茶されたり、いろんなお話をされていて、つながりが生まれていて面白いですよ。楽しければ自発的に動きたくなりますから。レモンって、主役ではないけれど、名わき役でいろんなものに合う、ここもそんな存在だといいなと思うんです。年齢や肩書き、国籍関係なくいろんな方が出入りして楽しいこと、美味しいものがたくさんある場所です。ぜひ、一度遊びに来てみてください、お待ちしています。

 

※上記記事は2023年7月に取材したものです。
時間の経過による変化があることをご了承ください。

多世代交流カフェ レモンの庭 松岡 美子 代表理事

多世代交流カフェ レモンの庭松岡 美子 代表理事 YOSHIKO MATSUOKA

多世代交流カフェ レモンの庭 松岡 美子 代表理事 YOSHIKO MATSUOKA

  • 出身地: 千葉県富津市
  • 趣味: 音楽はずっと近くにあった、読書(漫画、小説、哲学)、人の観察・交流
  • 好きな本: ジャンルを区別せずにその時々で変わっていく
  • 好きな映画: 風の谷のナウシカ、オール・ザット・ジャズ
  • 好きな音楽: 音は万人にダイレクトに届くもの。風も波も音で全て音楽に発展する

INFORMATION